つながろうプロジェクトin但馬に参加006

「つながろうプロジェクトin但馬」二日間の見学を締めくくる最後の大舞台は、香美町香住に鎮座する高野山真言宗の古刹、亀居山 大乗寺です。
「応挙寺」の名で全国に知られるこの寺院は、我々建築実務者にとって、単なる「美術館」ではなく、**「建築と絵画が不可分に融合したトータルデザインの極致」**として立ち現れます。

1. 建築を「フレーム」として捉えた応挙の視点

本堂に一歩足を踏み入れると、そこには円山応挙とその一門によって描かれた165面もの障壁画(重要文化財)が広がります。
ここで特筆すべきは、応挙がこれらの絵を「単なる装飾」としてではなく、**「その部屋の用途、光の入り方、さらには拝観者の視線の高さ」**を計算し尽くして配置している点です。

例えば、有名な「山水の間」。計算された遠近法は、座して見上げることで空間に奥行きを与え、平らな壁面がまるで無限の風景へと繋がっているかのような錯覚を呼び起こします。
建築という物理的な枠組みを、絵画によって拡張する——その大胆な空間構成に、参加者一同、感嘆の声を漏らさずにはいられませんでした。

2. 「光」を設計する——金箔と墨のダイナミズム

大乗寺の空間を支配するのは「光」です。電灯のない時代、自然光が障子を通して入り、畳に反射して天井や壁を照らす。応挙はその微弱な反射光を計算し、金箔の輝きや墨の濃淡を調整しました。

この「建築的環境における色彩計画」がいかに現代の空間設計に通じるかという点でも学びがありました。
時の移ろいとともに表情を変える襖絵は、建物という静止した物体に「時間」という息吹を吹き込んでいました。


【総括】つながろうin但馬、そして未来へ

二日間にわたり、但馬の地に刻まれた「産業・信仰・生活・芸術」という多層的な建築文化を巡った今回の研修。
浜坂支部から参加した3名にとって、各視察先での体験は、建築士としての視座を広げる貴重な糧となりました。

今回の見学で得た気づきを振り返ると、それぞれの場所が持つ独自の意義が浮かび上がります。

  • **「神子畑選鉱場跡」**では、斜面にそびえる産業遺構の圧倒的なスケールと、機能が導き出した造形美の力強さを体感しました。

  • **「名草神社」**では、出雲から移築された三重塔など、時代を超えて受け継がれる伝統技法と神仏習合の空間構成を深く学びました。

  • **「木の殿堂」**では、現代建築の巨匠が提示する「木」という素材の可能性と、自然と建築が共鳴する空間のあり方を再認識しました。

  • **「諸寄」**では、生活の場に根ざした建築の保存と活用のあり方を学びました。

  • **「余部」**では、技術の進歩と人々の想いが形作るインフラの尊さを再確認しました。

  • **「大乗寺」**では、芸術と建築が高次元で融合する極意に触れました。

これらの点在する建築及び産業遺産は、地域の歴史という一本の線で繋がっています。
私たち建築士の使命は、その線を未来へと太く描き直していくことにあると強く実感した二日間でした。

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